憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「す……、すっごい!」

思わず声を上げた。
尚は、バイクに寄りかかりながら目の前に広がる景色に目を細める。

空の青と海の青が、まるで一体になったかのように美しい。
光をうけて波が銀色に輝く。

「こんなに素敵な場所なのに、あたし達だけしかいないなんて…」

傾斜の低い斜面を慎重に降りて真っ白な砂を踏む。
木陰も多く、誠東のような蒸し暑さはない。

「いい場所でしょ」

「こんな綺麗な海、初めて見た!」

「この辺りは、葉山が昔買い取った土地なんだよ。レジャー産業にも手を出そうとしたらしいんだけど、結局はまだ未開発に終わってる」

「……はあ。なんだか、次元が違い過ぎるわ。ていうか、いいの?そんな場所勝手に……」

「使えるものは使っとかないとね」

尚は、楽しそうに笑った。
さわりと潮風が吹く。尚の黒髪がきらりと光を孕んで揺れるのに、目を奪われた。