―尚が、……結衣ちゃんを嫌ってるだなんて。
知っていることなんて殆どないのに、なんだか無償にやるせない気持ちに襲われて、最近吸うのをやめていた煙草に思わず手を伸ばそうとした。
ちょうどその時だった。
ブーブー、と鈍い音を立てて携帯のバイブが鳴った。
ディスプレイに表示されていたのは、尚の名前だった。あたしは、慌ててそれを胸に抱えてベッドを見る。規則正しい寝息が聞こえるのにホッとして、音を立てないようにベランダへと出た。
『もしもし、真知?』
「……そうですよ。ていうか、あんた、どういうつもりよ。あたしに妹を押し付けて」
『ごめん』
嫌味のひとつでも言ってやろうと思っていたのに、あっさりと謝られてしまい、それ以上何も言えなくなってしまった。
『今から会えない?』
「……は!?何言って……、ていうかあんた、今どこに…」
『下』
慌てて、ベランダから身を乗り出した。
そこには、ヘルメットを外しながらこちらを見上げる尚がいた。驚いて声を上げそうになるのを、なんとか押し留める。
「……わかった。すぐ行くよ」
小声で伝え、あたしは部屋着にパーカーを羽織って外に出た。

