憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


―さて、あたしはついに彼女とふたりきりだ。

お母さんは、元々お客さんを招いたりするのが好きな気質であるし、更には"尚の妹"だといったらふたつ返事で結衣ちゃんの宿泊をオーケーしてくれた。

風呂から上がって缶ビールを飲むあたしの横で、結衣ちゃんは小花柄のパジャマを着てテレビを見ている。それは、彼女の大きなボストンバックから出てきたものだ。どうやら、あらゆる生活必需品が入っているようで、正直何泊するつもりなのかが気になるのだけど。

「真知」

「な、なに?結衣ちゃん。あ!ごめんね、結衣ちゃんも何か飲む?ちょっと待っててね」

慌てて、部屋にあるミニ冷蔵庫を開けるも、そこには缶チューハイやら缶ビールなどのアルコール類しか常備していなくて、思わず肩を落とす。

そんなあたしの様子に、結衣ちゃんはくすくす笑う。
その表情が、夜道でみた雰囲気と随分違って見えて思わずどきりとする。

子供っぽい一面と、不意に見せる大人っぽい一面を、バランスよく持ち合わせた子だ。そのギャップは、きっと彼女の魅力なのだろう。

「真知って、ほんとうに尚の彼女なの?」

「も……、勿論ですとも」