憂鬱なる王子に愛を捧ぐ





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外灯でオレンジ色に照らされた夜道を、千秋と結衣ちゃんと三人で歩く。
結衣ちゃんは、尚と別れてからむっつりと黙り込んだまま視線はずっと地面に落としたままだ。


「結衣ちゃん、ヒサと帰りたかったんじゃないのか?」


千秋が、不意に結衣ちゃんに聞いた。
結衣ちゃんはちらりと千秋を見上げただけで、肯定も否定もしない。

折角、こんなにも可愛い妹がたったひとりで兄に会いに来たというのに、尚は冷たすぎるんじゃないだろうか。結衣ちゃんとなんの関係もないあたしに預けるだなんて。


「それじゃあ、何かあったら連絡しろよ」

「うん、今日はお疲れ様。それじゃ、またね」


千秋は、スッと腰を下ろして、平均身長よりも大分小柄であろう結衣ちゃんと視線を合わせて微笑んだ。


「結衣ちゃんも、またな」

「千秋、またね」


あたしと同じく兄妹のいない千秋は、随分嬉しそうに目を細めて、向いにある自宅へと帰っていった。