憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「いいの?真知」

「え、……えええ!?ちょっと待っ」

「よかった、ありがと!真知!」

よ、よくない!ちっともよくないでしょう!!どうして、こんな展開に!!
あたしの後ろからぎゅうっと抱きしめてくる、この腕の力から逃れられない。

「……ごめん、真知。俺の妹が迷惑を掛けて。なんだか、真知が気に入ったみたいだ」

いやいやいや。それ、絶対違うでしょう。声に出してツッコめない。この理不尽な状況。
まあ、仕方ない。一泊くらいいいか、どうせ明日からは夏休みだ。そう自分を納得させることしか、あたしには出来なかった。

「それじゃ、結衣。真知に迷惑をかけたら駄目だよ。必ず、家に連絡はいれること」

優しくて完璧なお兄様が結衣ちゃんの頭をぽんと叩けば、それはそれは悲しそうな瞳で尚を見上げた。

(これって……、もしかしてもしかしなくても、"ブラコン"てやつなんじゃないの?)

バイクで逃げるように去っていった尚。既にその姿は見えなくなったのに、いつまでも見つめ続ける結衣ちゃんを見てそっと思った。