憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「心配してるだろ、あの人達も。我侭言ってないで家に帰るんだ」

「ぜったい、嫌!それに、心配なんてしてないわ。お婆さまのおうちに行くって言ってきたんだから」

得意げに言った結衣ちゃんを前に、尚はなんだか疲れたような表情を見せる。この兄妹を前に、あたしと千秋は完全に蚊帳の外だ。

ふと、疑問が浮かぶ。
尚は、家族に対しても"仮面"を被って生活しているのだろうか。前に、美華さんと話しているところを見たことがあったけれど、その時は何を偽ることも無く、普段どおりの彼だったのに。

「尚の家に泊めて」

「駄目だよ」

「なんで!」

「理由は分かるだろ。ねえ結衣、折角だけれど、ごめん。今から、家に送っていくから」

結衣ちゃんは、きゅっと口を結んで尚を睨み上げ、パッと身を翻してあたしと千秋の後ろへと隠れる。

「……じゃあ、いいよ。真知の家に泊まるから!……いいでしょ、真知!!」

「ええ!?」

にこりと、小悪魔よろしく微笑む結衣ちゃん。

―ていうか、早速呼び捨てか!


前言撤回。
この強引で人を振り回していく感じ、尚にそっくり。

心底困った様子の尚(演技)と、彼女の突拍子さにあからさまに恐怖を覚えている千秋に、助けを求めるべく目を向ける。