憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「……結衣……」

ただ一言、尚は彼女の名前を呼んだ。

―ユイ……?
あたしと千秋は、ワケがわからず呆然と二人を見る。
千秋に支えられていた彼女は、その声にピクリと反応して顔を上げる。尚を前に、大きく目が見開かれる。

そして。

「尚!」

小さく叫んで、思い切り尚に抱きついたではないか!

ど、どうなってるの。
昔の彼女か、それとも実は本命の彼女なのか。あたしの心に、モヤモヤとした嫌な気持ちがわきあがる(いやだ、これなんだろう……)

尚は、ユイと呼んだ彼女の細い肩を両手で支える。

「驚いた。どうして、ここに?」

彼女に問いかける尚の声は、素の彼じゃない。
いつものツンケンとした様子は微塵も感じられず、どちらかといえば一般大衆向けに計算された尚の姿。