憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


あたしはひとつ、尚に渡す。
そして、「千秋が買ってきてくれたんだよ」と言った。

尚はしょうがないな、と溜息を吐いて、少し離れた場所で一般客を立ち入らせないように誘導をしている千秋の元へと歩いていく。

長い指が千秋の肩に触れた瞬間、びくりと身体が跳ねた。

「っわ!ヒサ……」

あからさまに、気まずそうにきょろきょろと視線をさ迷わせたあとに小さく項垂れる。そんな様子に、尚は小さく笑った。

「ありがとう、千秋。お好み焼きなんて久し振りに食べる」

「……うん、ごめんな……」

心底申し訳なさそうに言い、それでも笑みを浮かべる尚を前にここ最近曇りがちだった千秋の表情にようやく晴間が見えた。