憂鬱なる王子に愛を捧ぐ



「その時まで、待ってて」

その言葉に何も言えないでいたあたしの手に、尚が無言で何かを握らせる。
ぼんやりと目にしたそれは、さっきまで尚が食べていた林檎飴。しかも、赤いベッコウの部分が綺麗になくなっていて血色の悪い哀れな林檎の串刺しだ。

「あげる」

「……いらないんですけど」

「俺も。しなびた林檎は嫌いなんだ」

「って、なにそれ!じゃあなんで買ったの!?」

「捨てといて」

そのまますたすたと歩き出してしまう。
まったく、まわりの飴だけ舐めて林檎を残すとか。なんて林檎飴に失礼な男なんだ。

あたしは近くにあったゴミ箱に可哀想な林檎を捨てて、慌てて尚の後を追った。