憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「……じゃなくて」

「なに」

「うん。デートしよう」

恐る恐る尚を見れば、らしくもなくポカンとした顔であたしを見つめている。
そして、噴出すように笑うのだ。
なんだか気恥ずかしくなって、思わず声を上げる。

「何笑ってんのよ!」

「だって。凄く怖い顔してたから襲われるのかと思った」

「酷っ!……て、ちょっと、どこ行くの?」

立ち上がって扉の方へと歩む尚の背中に声を掛けた。尚は振り返り、ゆっくりと口角を上げる。

「デートだろ?自分が誘ったくせに、早くしてよ」

目の前で、ぱちんと何かが弾けた。
胸の鼓動に急かされる。扉の前で小さく笑う尚は、やっぱり格好良くて。自然と火照る自身の顔をパタパタと手で仰いだ。