憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「もう18時半……、千秋ったら打上げ準備の前には帰ってくるでしょうね?」

花火開始は20時。遅くても19時前には戻ってきて貰わなければ困る。
ふわァ、と欠伸を噛み殺している尚をちらりと見た。

「ねえ」

眠たそうにしている尚に声を掛ける。
なに、と視線を持ち上げる尚を見た瞬間に、どくんと心臓が大きな音を立てるのだ。

―なな、なんで、尚に話しかけるだけでこんなに緊張しなきゃなんないのよ」

とうるさい心音が、この静かな空間に響いてしまうんじゃないかとか、馬鹿な考えさえも浮かんでくる。

「あの、さ」

「何?」

「……ああ、あの、……準備が始まるまで、まだ時間あるし。屋台とか、見て回らない?」