憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


絶対零度の視線。
ドクドクと心臓が大きな音で鼓動する。言葉に詰まる千秋に尚が小さく笑った。

「俺は……」

搾り出すように言葉を紡ぐ千秋を、尚はジッと見つめる。

「俺は、……もっと、話して欲しい。頼って欲しい。ヒサには、助けられたから」

「別に千秋の為にやったわけじゃないし。俺は、椎名純子が気に食わないからやっただけだ」

―嘘つきだ、やっぱり。あたしは、尚が千秋のためにどれだけ一生懸命裏で動いていたかを知っている。

張り詰めた空気は痛い。呼吸でさえままならないくらいに。
怯えた様子の千秋に溜息をついて、尚は強制的にこの話題を断ち切った。大通りに出て、流れてきたタクシーを止める。