「悪いね、こんな遅い時間に呼びつけて。今の時期ァ、いろいろと準備に追われていてね。久し振りに工場からこっちへと戻ってこれたんだ」
「とんでもないです。むしろ原さんに手掛けてもらえるだけで光栄ですから!」
「ははは、嬉しいねぇ。そういえば、千秋の横にいる"いけめん"は誰だい?去年はいなかったよな」
原さんが、笑みを深くしながら視線を尚へと向ける。長年の努力、経験と勘がものを言うベテラン花火師の原さんの眼光は深い。その目を、尚は躊躇いなく真っ直ぐに見つめた。
「ご挨拶が遅くなってすみません、岡崎尚と言います。宜しくお願いします」
「岡崎君か。俺は原剛三。こちらこそ、今年の夏は宜しく頼むよ」
意外だった。
尚は、何も偽ることなくありのままに名乗った。飾りの笑顔も、余計な言葉もなくただシンプルに。それは原さんには好意的にうつったらしい。嬉しそうに尚の肩を叩き、スイカを食べろと勧めていた。

