「こんばんわ」
藍色の法被を肩に掛け、軒下から伸びる朝顔に水やりをしていた原さんに千秋が声を掛ける。原さんは、くっきりと皺の刻まれた顔を綻ばせて手を上げた。
原さんは、今年65歳になるらしい。
見事な白髪は短く刈られ、肌は日に焼けて真黒で年齢をまったく感じさせない。代々続く花火師の家系であり、伝統的な日本の花火を守る職人気質の人だ。
多くの弟子を抱える原さんは、本来大学のイベントで依頼出来るような方ではないのだけれど、彼の娘さんが誠東学園の卒業生だということで毎年特別に引き受けて貰っているのだ。
家に招かれたあたし達の前に、涼やかなグラスに入った麦茶とスイカが置かれた。ああ、もう夏だなぁ、なんてしみじみ思ってしまう。

