「どうも」
玄関前には、黒のブイネックTシャツとダメージジーンズを嫌味なくらいに綺麗に着こなした尚が立っていた。
あたしの後ろでは、声を聞きつけたお母さんが「尚君尚君」と五月蝿くてしょうがない。以前、一度だけうちに来た尚を見たときからお母さんはどうやら彼のファンになってしまったようなのだ。
「ご無沙汰しています。先日は、お世話になりました」
「また、尚君が来てくれるのを楽しみにしていたのよ。どうかしら、少し上がってお茶でも呑んでいかない?」
わくわくと声を掛けるお母さんに、尚は心から申し訳なさそうに眉を寄せる。
「すみません、これから委員会で準備をしなければいけなくて。また今度、是非お邪魔させてください」
「……そう、残念ね」
本気で悲しそうだ。こんな姿を見たら父は泣くよ!
あたしは、「それじゃあね、行ってくるね!」と言って玄関のドアを閉めた。

