憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「何言ったんだよ、ヒサ」

「別に?椎名さんが謝りに来たから、もうこういうことは止めるように言っただけ。許してあげたよ」

「そっかー」

納得した様で、千秋は「ヒサって優しいのな」と笑顔を浮かべながら言った。どこからそんな嘘が生まれてくるのか不思議でしょうがない。

「そういや、誠夏祭の件なんだけど。今年は一般入場者も可ってことになったの聞いた?」

「え、なにそれ!知らない!」

「年々、参加希望者が増えてさ。チケット制ってことで誠東生の知り合いだけ入れる様にするらしいんだ」

「誠夏祭って、ただのショボイ花火大会だろ。一般客入れてどうするのさ」

千秋は、馬鹿馬鹿しいと珈琲を啜っている尚を無理矢理パソコンに向き合わせ、去年の売り上げ諸々が集計されたエクセルデータを人差し指でつついた。