憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「ごめん、千秋。俺はもう行く」

「ヒサ!」

小さく謝って、尚はあたし達に背を向ける。千秋が叫ぶように呼んだけれど、尚は振り返る事もなくあっという間に消えてしまった。

追いかけなきゃ。
その気持ちだけが、あたしの心一杯に膨らんだ。

「ど、どうなってるの?全然分からないけど」

野次馬の中の誰かが呟く。
興味本位で騒ぎ立てるやつらに、わかってたまるか。