憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「……真知」

千秋が、心底驚いたという顔であたしを見つめる。
あたしも、自分にびっくりだ。

こんなにも、冷静でいられることに。
怒りは静かに波打つだけで、指先に震えもない。

「これ以上、大切な幼馴染を傷つけないでくれる」

「なっ、」

息を呑む純子の表情が、なんだか可笑しかった。
彼女が今まで取り繕ってきたものが、ほんの少しだけ剥がれ落ちるのを見れた気がする。

"真知という人間は、ここで感情的になって、勝手に不利な行動を起こして自滅する"

そう読んでる?

「そうはいかないんだなァ、これが」

「は?」

小さく笑ってみせる。
そんなの所詮、昨日のあたしだ。計算なんて、結局未来までは見透かせない。