憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「そんなこと言うなよ。俺、別に純子を信じてないわけじゃない。ただ、ちゃんと向き合いたいだけだ」

「向き合うって何?そんなこと言ってる時点で、真知から吹き込まれた私の悪口を信じてるってことでしょう!!酷いよ」

ついに、純子は大粒の涙を落としてその場にしゃがみこんでしまった。
ど、ど修羅場だ。そして、あたしも千秋と同じく完全に悪者だ。

「千秋に同情する」

尚がぽつりと呟いた。
王子にこんな感情を抱かせるなんて、ある意味凄い。

"千秋君も酷いけど、その真知って子も最悪じゃない?何、悪口吹き込むって意味わからない"

"ねえ、私聞いたことあるよ。その子って、確か尚君と付き合ってる!もしかして尚君も、騙されてるんじゃ"

以前に、純子と対峙したときに言われた言葉がふと脳裏を過ぎる。

『真知、あなた。私に協力しなかったこと後悔するわよ。絶対』

昔だったら、逃げていたのかな。
ああ、それも違う。向き合うことすらしなかったから、逃げることもしなかったはずだ。

そっと尚を見上げる。
尚は、不思議そうな顔であたしを見つめ返した。
尚と出会って、まだほんの僅かな時間なのに、最近酷く実感してしまうのだ。