憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「何しに来たんだよ」

さっき、尚に泣きついていた態度とは打って変わってのこの様子。あたしはぐっと押し黙る。わかっていたとはいえ、やはりこの空気は刺すように痛い。

「……何しにって、……別に!たまたまホームに用事があったのよ。そしたら、あんたが尚とイチャイチャしてるから入れなかったんでしょう!!」

ベーっと舌を出してみせる。
何やってんのよ、あたし。こんな子供みたいな喧嘩をしにきたわけじゃないのに。

しかも、ふと嫌な視線を感じて千秋の横を見れば、尚が恐ろしい目であたしを睨んでいた(……こ、殺される!)

「……あっそ」

千秋はふんと、あたしから顔を背けて立ち去ろうと腰を上げる。
引き止めなきゃ、意地を張ってる場合じゃない。喉がからからで、思わずごくんと唾を飲んだ。

「ち……、千秋」

ようやく、それだけが口から出た。
千秋にも届いたはずだ。