憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「俺、酷いこと言った。真知、泣きそうだったよ。あのときの顔が、頭から離れないんだ」

千秋は、悲しそうに目を伏せて、ぎゅっとこぶしを握った。

「純子といてもずっと……。逃げるように距離をとって、考えないようにしても無理だった。だって、俺は知ってたから。真知は、何も理由がなくてああいうことをする子じゃない。ずっと、真知の一番近くにいたんだ。誰よりも知ってる」

「ふうん」

「ふうんって!ヒサ、俺に冷たい!」

「俺まで千秋を甘やかしたら、それこそ腐る一方だろ」

尚は嫌そうに眉をしかめる。
どうにも、この千秋の人懐っこい部分に未だ慣れないようだ。

「千秋は、真知も信じたいんだね」

「それは……」

「ずっと一緒にいたのに、純子を選んで理由も聞かずに真知を突き放したくせに」

尚の言葉に、ようやく千秋はムッとしたように口を尖らした。

「おまえって、結構意地悪だよな」

「煩いよ、ヘタレ千秋」

「……ちぇ」

呆れた様に煙草に口をつけ、ゆっくりと吐き出された紫煙に、煙草を吸わない千秋はケホケホと咳き込んだ。