憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


適当に入った近くのファミレス。
ピンポーン、と入店と同時にベルが鳴る。

「いらっしゃいませ、2名様でしょうか」

それを聞きつけた若い店員さんが、満面の笑顔であたし達を迎えた。
尚は、綺麗な笑みを浮かべて「はい、ふたりで」と短く言った。

あたしは見た。
その店員さんが一瞬にして、顔を真っ赤にさせたところを。近くに居すぎて、しかもどうにも意地悪い一面ばかりを目にしているために、あたしは忘れそうになるけれど。

そっか、尚って本当に格好いいんだよね。
改めてその整った横顔をまじまじと見つめてしまった。雨で少し湿った黒髪の、なんてセクシーなことか。

(その色気を少しあたしに分けて欲しい、なんて死んでも言えないけど)

最近ではそのスペースも縮小されつつある喫煙席で、尚はゆっくりと紫煙を吐き出した。

あたしは、ドリンクバーで2つの珈琲を用意する。
尚は……、砂糖なし、ミルクだけ。いつの間にか覚えてしまってる自分が嫌だ。

優雅に珈琲に口をつけた瞬間に、眉を潜める尚。

「……まず」

そりゃ、いつもあんたが飲んでる珈琲と一緒なわけないでしょう!