憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「ご迷惑をお掛けして、すみません。ありがとうございました」

頭を下げる。
感謝してもしきれない。

あたしは、紗雪先輩に話せることは殆ど無かったのに、その事情も聞かないであたしの話を聞いてくれた。
ただ先輩に話を聞いて貰えただけで、あたしは随分、救われた。

頭を上げたあたしの視線と、先輩の視線が交わる。
その瞳はどこか憂いを含んでいるようだった。それに小さく首を傾げてみたけど、あたしは尚に引かれて玄関に向かう。

「それじゃ、また明日委員会でね。さぼるんじゃないわよ」

「はい」

水気を含んだ靴に眉をしかめつつ外に出る。

「真知」

あたしの背に、声がかけられた。

「……純子に、負けるんじゃないわよ」

驚いて後ろを振り返ったときには、もう扉は閉められていた。