憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


たっぷりの間をおいた後、ようやく決心したのかそっとあたしに顔を向ける。少し戸惑いを含むその瞳に、不安気な表情をありありと浮かべるあたしがくっきりとうつった。

「……俺、純子に告られた」

「え」

「きのう、あの後」

「嘘」

「そんなものついてどうすんだよ。ただ、あまりにも突然だったから、なんだか信じられなくて」

よく見れば、千秋の首筋に痣のような赤い印が残っているのが見えた。
わざと、目立つところにつけられたように感じる。氷のように固まって、あたしはピクリとも動けずにいた。けれど反対に、心臓だけはドクドクと大きく音を立てている。

そっか。千秋は昨夜、純子の家に泊まったんだ。そのシャツに鼻を寄せれば、きっと"彼女"の残り香がかおるに違いない。

完全に、遅かったのだ。

「つ、付き合うの?」

聞けば、千秋は嬉しそうにゆっくりと微笑んだ。