早朝の大学構内に人は疎らで、シンと静まり返っていた。

原付を駐輪場に止めて、もう一度携帯電話を見る。やっぱり、千秋からはなんの連絡も入っていなかった。
確か、千秋は今日2限からのはずだから、もしかしたら授業の前にホームに寄るかもしれない。

そんなことを考えて、広大な敷地の最南に位置する建物までとぼとぼと歩き始めた。
そのときだった。

「……真知」

真後ろから声を掛けられて、反射的に振り向く。
そこには、薄茶色の瞳を大きく見開いた千秋が、驚いた顔であたしを見つめていた。