狭く小さい、檻のような冷たいコンクリートの部屋の中。
五歳の時この地に引っ越してから、俺は一日中この部屋にいた。
部屋の中には数台のカメラ。
無断で抜け出すことは夢のまた夢だった。
その中で食べる食べ物は、不味くも美味しくもなくて、何の味もしない。
ただ自分の命のために、無理矢理流し込んでいるようなものだった。
目に見えるのは、巨大な本棚にしまわれた大量の教科書や参考書。
それと、斜め上の小さな換気窓から見える、
青く広く、自由な"空"だった。
母親の再婚相手は有名な科学者。
俺はそいつから、周りから、番号で呼ばれていた。
"001"
それが俺が振り向くべき呼称だった。
「001、お前は今日から実験台だ。
一日中勉強しろ」
それは、親父(あいつ)が研究している"人間の知能の限界"の材料だった。
………"実験台"。
俺は生まれて6年にして、自分の人生の終わりを悟ったんだ。
そんな俺の生き甲斐はただ一つ。
窓から見える"空"。
俺は空が大好きで。
その小さい枠にはまらない大きさと自由が、
鮮明で綺麗な快晴が、
記憶に残る"そらの笑顔"が、
俺を束の間苦痛から連れ出してくれた。
でも、それも最初だけだった。

