【短】そらとタイヨウ



彼女は、俺の胸の中で尚も啜り泣いていて。

それでも確かに、そらは言葉を紡いでいった。


「………死なないで」

「え?」


彼女は最初から…
俺の決意に、気づいてたんだ。


「………お願いだから、死なないで。
命を、粗末にしないで。

空、嫌いなままでいいから。

私の生きがいを奪わないで。消さないで……。

…タイヨウが生きてるから、そらも生きられるんだよ?」



やっと、分かった。

この会えなかった時間、そらの中での俺が、俺の中でのそらと同じだったこと。

形は違えど、お互いに想い続けた生きがいだったこと。




「私の…気持ちも…少しは、考えてよっ」

「……ごめん」


あの頃よりは大きいけど、それでも俺にとっては小さい手が、
キュッと俺の裾を掴んだ。


「ずっと想い続けた人にやっと会えたのに、ついてきたら、飛び降りようとしてるなんて……
そんな仕打ち……っ」


「………ごめん」


震えが強くなった彼女の肩を、出来る限り強く抱き締めた。



「……ずっと、待ってたんだから…」



静かに体を離すと、その偽りのない綺麗な目を見つめた。

両手で彼女の頬を覆って、そっとその涙を拭う。

彼女の赤い顔と、手に感じる体温と涙は、昔と全く同じで。

彼女の存在を改めて、体に染み渡らせた。



「………ありがとう」


自分の顔が自然と綻んだ。

長年、笑顔なんて作らなかったから、ぎこちない変な顔になってると思うけど。

俺の気持ちに嘘は無くて。



お願い、届いて……。