俺は女に本当の俺を出していない。
「碧斗くん、お腹減ったー。」
この馬鹿みたいな顔をしている
麻雪って名前の先輩を除いては。
「昼飯代請求していいすか。」
王子様スマイルも優しい言葉も
昔から慣れていて得意なはずなのに
先輩には出来ない。嘘がつけない。
先輩が拗ねてると優しくして
やりたいって思うけれど
それはいつもの社交辞令じゃなくて
紛れも無い素の俺がしたいこと。
先輩は葉山さんに恋していて
俺は先輩と仲良くしても俺も先輩も
得をしない。癖に俺は毎日毎日
部室に来て、先輩に会いに行く。
「なにしての先輩。」
ウトウトしていた俺の髪をいじる先輩。
「碧斗くんっていい匂いするー」
鼻をクンクンして嗅ぐ先輩。
「うっわ。先輩って変態なんだ。」
いつも憎まれ口を叩いてしまう。
先輩が嫌いだったはずなのに
早く部室から出て行って欲しかったのに
この空間も、先輩も、悪くない。
