お互い思ったことを口に出すほうじゃなかったから、意見のすれ違いが重なって、とうとう「ごめん」の一言が言えなくて、最後はこのオルゴールで大喧嘩。

珍しく怒った彼が、乱暴にドアを閉めて出て行った。

そして、帰らぬ人となった。

本当にあれから何回口に出して言っただろうか。

「ごめんね、涼ちゃん…今どこにいるの?会いたいよ…」

目を閉じて、そう言ったはずなのに今は声にならなかった。

目が覚めたとき、そこは広い草原で、優しい風と大きな空を近くに感じられる不思議な場所だった。

そして、目の前には涼ちゃんがいた。

私の大好きな涼ちゃん、私が好きだった笑顔のままで立っている。

「涼…ちゃん」

草原に座っていた私は、震える体を起こしてよろよろと駆け寄って確かめた。

「涼ちゃん」

嬉しくて涙が出た。

「涼ちゃん、ごめんね?私、あの時、素直じゃないからっ…本当に私、涼ちゃんにもう一度会いたくて、今会えてて嬉しくて…」

せっかく会えたのに言葉が見つからない私は、もどかしかった。

でも、そんな私を涼ちゃんはそっと抱きしめてくれた。

不思議に思って見上げると、涼ちゃんが悲しそうに微笑んだ。

唇が動いて…何か言ってる。

「オレもゴメン」

瞬間、広い草原と青空は消えて、私は自分の部屋にいた。

気がつけばもう朝で、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいた。

目の前のオルゴールが光って見えた。

白いうさぎの欠けた耳が、きれいに元に戻っていた。