『安斎の事かもしんないじゃん』

まだわかんないじゃん。

『んなわけねーだろ。住田先生ってめっちゃモテてんだぞ?俺なんか無理だっつの』

『陽子ちゃんがモテてるから諦めんの?』

こんなことあたしが言える立場じゃない。
わかってるよ
抑えろ、あたし!!


『…。もう俺は大人なの!子供みたいにいつまでも片思いなんてカッコ悪いマネできねーんだよ』
『だから俺はもーいいんだよ』
そういって安斎は自嘲気味に笑った。




ぷちん。

あたしの中で何かがはじけた音がした。


バンッ!!!

思いっきり机を叩いたおかげであたしの手はジンジンしてる。

でもそんなの関係ない。


『さっきから聞いてりゃ…陽子ちゃんがモテるから無理だだのもういーだだのなんなの!?』


…やっちゃった…。

あーあ。
安斎びっくりしてるよ。
こーなったらもういいや。

『モテるから何??大人だから何なの??恋すればみんなみっともなくてカッコ悪いよ!!

それとも大人になったらいつでもカッコつけて、壁があったからってすぐ諦めなきゃいけないの…?』


『…。』

『あたし…バカだよ。

クラスでビリだし、こんなカッコだし。
でも…
でも、恋する気持ちはわかる。
陽子ちゃんを見る安斎の目は、恋してる目だったよ…。
それでも、この恋は諦めなくちゃいけないの…?』


安斎の目を、じっと見つめる。

あたしも、安斎も目を反らさない。

…結局、すぐに最終下校のチャイムが鳴って安斎から何も聞けないままあたしは家に帰った。