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『おわったぁー!!』

『おーし。今日は帰っていいぞー。お疲れ』


あたしに言ってるのに安斎はあたしの方を向いてない。

安斎はいつもそうだ。

いつもあたしじゃなくて、いっぱい並べてある本でもない。

中庭の大きな木の下。

あんまりいつも見てるから、何度かあたしも覗いてみた。

大きな木と、ベンチ。
それと、保健の陽子ちゃん。


だからあたしは確信してた。




『安斎』

『なんだよ』

安斎はまだ窓の外を眺めてる。


『恋、してるでしょ?』

『…………え?』

あ、こっち向いた。
そんな目見開かなくても…(笑)


『陽子ちゃんに恋してるよね?』

思い切って聞いてみた。

『…そんなこと…ねーよ』

うわー…
めっちゃキョドってるし(笑)

『嘘。あたし嘘見抜けるんだから!!』


嘘だけど。


『そんなんじゃねーよ…』

『じゃあなんでいつも見てんの?』

『………』


『それって好きなんじゃないの?』


『だって住田先生好きな人いるらしーし。だからもういーんだよ』

住田先生…
陽子ちゃんのこと。

やっぱ好きなんじゃん。
しかもすでに諦めてるし。