ある雨のぱらつく2月の深夜、くるくると渋谷で働くワンマン社長、私の三人で
午前二時にBar Cloudyが閉まって、マスターに追い出されるまで呑んでいた。
その後、不良外国人と飲んだくれ日本人の吹きだまりのような真っ赤なバーに
呑みに行った。
私は、冬のセールでヒルズで勝ったばかりのカードの引き落としも終わっていない
産まれて初めて大枚はたいて買ったハンウェイのワインレッドの未使用の傘を置き忘れて
からこの店にはあまり足を運ばないようにしていた。
何かを無くした店なんて、次の来店時はもっと何かをなくしてしまうような不吉な
イメージを抱いているからだ。
昭和ギャグを連発するカナダ人に、
絶対初対面でもないのにまたもや名刺を渡され
自己紹介され、房総する私をなだめつつ、
くるくるは、私の腰に手を回して来た。
酔っている時に支えられると、
いつもは一人で立っている女も、
温もりにあがなえない 気持ちになってしまうことが良くある。
私は、その手を避けもせず、肩を抱かれても
なすがままにまかせていた。
いつもは、雰囲気に流されたりしない私なのに、
なぜか心地良かった。
そうしている間に澁谷の社長は帰ってしまったようだった。
