ソフト・コア

 
  顔はとびっきりのハンサムではないけど、ぱっちりしたいつもまぶしそうな瞳と
  
  伸ばしてもチョビひげしか映えない柔肌の愛嬌のあるつくりだ。


  笑うとととても幼く見える。意外に母性本能を刺激するタイプかもしれない。
  
  本人は、無頼で野生派を気どっているらしいけれど、
  
  それを気どるには身ぎれい過ぎるのだ。





 Bar Cloudyは澁谷の線路沿い、昔ながらの飲み屋横丁にある
 座席8席ほどの角地に立つ店。

 
 バーのチョビひげマスターは、くるくるにお兄さんのように慕われ、

 似たような帽子を
 
 被ってタバコをふかす渋いバツイチでバイカーのマスターだ。


 私は、いつも適当に酔ってお店に行く度に、そんな彼の名前も覚えられずに、

 髪の毛をみてくるくるってばかにしていた。

 あの夜がくるまでは。



 私には一応彼がいる。


 優しいけれどそそらない彼が。

 彼は私が一人で呑みに行くのをあまり快く思っていないので

 たまに一緒に店にも行く。