何度忘れようとしても

佐伯くんは数秒で私の悩みを解決してくれた。

高岡さんの言ったとおりだった。

お礼に昨日お土産でもらったフィナンシェをあげると彼は無邪気に喜んだ。
そのあとはスムーズに作業が進んで印刷も無事にでき、私は予定通りの電車に乗って地元へ帰る事ができた。

地元の駅には美智留が車で迎えに来てくれた。

「おつかれー。こっちはめちゃめちゃ寒いね」

車に乗り込む。
仕事帰りで夜会巻のヘアスタイルをした美智留が、運転席で携帯をいじっていた。

「お帰り。ごめん、日南子1件電話していい?」

「いいよ、してして」