何度忘れようとしても

「あ。やだ、そうだった・・・分かる?」

私は顔がむくんでいた事を思い出し、情けないなぁ、と思った。

「大丈夫ですか?寝不足、とか?」

心配そうに首をかしげる。
可愛い仕草。
とても私にはできない彼女特有の丁寧な反応だった。

「違うのよ。昨日飲み過ぎちゃっただけ。頼まれたサンプル持ってきたからね。」

私は口紅のペーパーサンプルがたくさん入った紙袋を、真梨果ちゃんの前に差し出した。