何度忘れようとしても

佐伯くんの料理の手際は良かった。

タマネギやジャガイモだけじゃなくて、なすやピーマンやごぼうや、ゆで卵なんかを勢い良く炒め、作ったルーにゴロゴロ入れて煮込んでいく。

私は目の前で魔法の様にスープカレーが出来上がっていくのを手伝うのも忘れて見とれた。

「いい匂い〜」

部屋中にスパイスの香りが広がった。

「井川さん知ってます?スパイスの癒し効果」

「体が温まるとかじゃないの?」

佐伯くんはシェフみたいに味を確かめて頷いた。