何度忘れようとしても

次の日からは、ちゃんと仕事に行った。

孝昭の事はふとした時間の隙間に思い出す事はあるけれど、忙しくしていた方がまだ忘れていられた。
連絡を取り合わなかった3ヶ月だって普通に過ごしていたのだから、今更気にしたって仕方ないと自分に言い聞かせたりした。


翔太との約束の日は、仕事を19時に切り上げた。
ビルの外に出ると、人気のハイブリットカーで翔太が迎えに来ていた。

私は助手席に乗り込んだ。

「お疲れ。何これ翔太の車?」

「まさか。営業車だよ」

初めて見るスーツ姿の翔太からは、シトラス系の香りがした。

香水の趣味が変わったのか、それとも仕事柄やむを得ず変えたのかどっちなのかなぁとぼんやり思った。