そして、炯斗は大股で人だかりの中に入る。

周りの人の手を借りて立ち上がったばかりの宇佐目に近寄り――

「おいコラてめえ」

「ん?ひぎゃあ日奈山!」

「呼び捨てにしてんじゃねぇッ!」

と、宇佐目の重い腰を蹴った。
変な声を上げて宇佐目はドスンとまた尻餅をつく。

野次馬は炯斗を咎めるようにみたり、好奇の目で見る。

炯斗はこめかみに青筋をはっきり浮かべ怒鳴る。

「てめえッ!何こんなところまで追けてきてんだ!」

「ひぃぃっ!ごめんよ、お願いだから何にもしないでぇっ!」