空耳此方-ソラミミコナタ-


羽田の後ろで、恵と言乃は頷く。
炯斗は胸をなでおろしつつ、笑顔を見せた。

必要だったとはいえ、犯人相手に女子二人とはずいぶんと不安だったのだ。

三人は皆のいる一角に近寄り、炯斗もそちらへ歩み寄る。

「じゃあ、うまくいったんだな」

「うん。バッチリだよ!」

少し目線を上げると、浮いたアズサも穏やかに笑った。
再会は、良いものになれたみたいだ。

「羽田さん」

呼び掛けながら、表情を引き締める。

「羽田さんに教えてもらいたい。あんたの犯行を手伝ったのは――?」

「……」

羽田は一度だけ、視線を送った。
申し訳なさそうに顔を崩して、口を開く。

「………樋山朝隆、その人だ」

「貴様ッ、羽田ぁ!!」

「だが…」

羽田がもう一度口を開いたため、樋山は退がる。

「実をいえば私にもわからない。樋山さん、どうして……?」

困惑の視線を向けられて樋山は、小馬鹿にした笑う。
ますます頭を抱える羽田の肩を炯斗が押さえた。

「同情の必要はないぜ羽田さん」

「何?」

「ククク……」


不気味に笑う樋山の目は何を写しているか。

炯斗は汚いものを見るような視線を送る。