「郁美…」
不満顔を見せる朋恵に小さく大丈夫、と言って郁美は炯斗に直る。
「樋山さんが言ってること、それは事実だよね。本当にいいの?」
念を押すように炯斗に迫る。
その後ろで、樋山の唇がほくそ笑むようにめくれる。
しかし、炯斗の態度は変わらなかった。
「ああ。ことのんが襲われたことも、恵が見られてるような視線を感じたのも事実だ」
しゃべりながら、炯斗は席を立ってテーブルの周りを歩き出す。
「だが、それはおかしいんだ」
「何で?」
「あくまでも羽田さんの目的は克己さんただ一人。
洞窟に近づけたくないにしても、人を襲うほどじゃない。だから羽田さん手製の地図にも危険って書いてあって、近所の大場さんを見張りに立てて人を近づけないように言ってあるだけだった。
俺たちみたいに玲子さんの関係者じゃなきゃ、あんなところ『危険だ』って言われたら近づくこともないからな」
「つまり、羽田には屋代さんを襲う理由がないということかい?」
「そうだ。だからことのんを襲ったのは羽田さんじゃない。そして────」
炯斗は立ち止まる。
そして、目の前に座る人物を見下ろして、


