空耳此方-ソラミミコナタ-


「暗号が……玲子……!! お前…っああぁ!」


透は顔を手で覆って泣き出した。
真実を知った一同はなんと言っていいのやら、判らない沈黙に支配された。


「けど…私たちが避難した時って、羽田さんいたよね?」

「そういえばそうだわ。避難誘導してたもの」

静寂を破って口を開いた郁美に朋恵も頷いた。

「……だが、彼が犯人であることに、間違いはないのだろう? 小僧」

「ああ。さっき話した通り、今回の事件では犯人は羽田さん以外にあり得ない」

普通に頷いて肯定する炯斗に、あからさまに樋山は眉をひそめて見せる。
「……なら、さっさと逮捕するべきではないのか?」

「大丈夫さ。こんな言い方は嫌だけど…羽田さんは、もう目的を達成したんだ。他に誰かを殺そうとは思わないよ」

「お前たちの…仲間の一人があの男に襲われたと……いうのにか?」

「……ハッ」

炯斗は思わず声を出していた。

おいおい…マジかよ……

「ちょっと日奈山!」

「え、何?」

朋恵が咎めるように言うと、炯斗はきょとんとして見つめ返す。

「あんたね! ちょっ―」

「ねぇ、日奈山くん?」