空耳此方-ソラミミコナタ-


言乃はさらりと言ってのけた。
あまりにもあっさりとした為に羽田は壁に体を預けて笑った。

「君たち……本当に殺人者を相手にしてるつもりなのかい? それにしてはずいぶんと余裕だね。私がここで君たちを殺すかもしれないってのに」

「それはありません」

『悟。貴方は…理由もなく人を殺せるような人間じゃないよ』

梓も、諭すように語りかける。
しかし、羽田は歯を剥き出して三人を睨んだ。

「どうしてわかるって言える!? もう既に一人殺ってんだぞ!!」

「……だったら、どうして私を襲った時に私を殺してしまわなかったんですか!?」

羽田は急に怯えたように目を開いた。

「…あ……?」

「私が、この洞窟を一人で来た時のことを聞いていないのですか?
あれは、共犯者の方だとは思いますが、殺すなと指令したのは貴方のはずです」

厳密に言うなら言乃は本当に死にかけた。
恵が見付けたからこそ助かったようなものだが、羽田はそれを知らされていないだろう。
そこは、二人の温度差か、この場所のせいか。

「私、羽田さんにお墓参りみたいって言いましたよね? 羽田さんも同じように思ってるんじゃないですか?」

「何……」