羽田の動きがビクリとして止まる。
言乃は真摯に彼を見つめて続ける。
「貴方の名前を理解する前に、一番引っ掛かったのはデザイナーの学校に通ったということです。
時期も合いますし、もしかしたらとは思っていましたが、決め手がありませんでした」
それは名簿によって確信に変わった。
続きを恵が引き取る。
「そして、突然家族を失った青年のことは島中の誰もが知っています。
その青年が成長して独り立ちして、島の活性化に努めてくれた。
そんな人の頼みを、村の人々が断れるでしょうか?
いえ、人々の多くが不当だと思った犯罪の復讐を……断れるでしょうか?」
「………」
羽田はじっと足元を見つめて、アズサはそんな彼を心配そうに見つめている。
「君の……君らの推理には穴があるよ……」
「なんでしょう?」
羽田はゆらりと言乃を睨み上げる。
「火事が起きたとき、私は花守荘の前にいた。お客様を避難させているのに、オーナーの私がいなくなる訳には行かないだろう?」
「もちろん、共犯者がいましたよ。そちらは、炯斗くんに任せてあります」


