「そして、証拠隠滅として4階の部屋で火事を起こしてテープを燃やし、ガラスを割れば、犯行は完了だ」

「日奈山くん、待ってくれ」

高橋が、ずっと書いていた手帳から目を上げる。

「火事のタイミングがおかしい」

「いいや。犯人は火事で人の気をひき、車の音の違和感を消そうとしたんだ」

「車の違和感?」

「こんな小さい島で車を持ってる人なんてほとんどいない。そんな車が夜間に通ってたら、住民が気付くだろ」

「そういう……」

高橋はまたそれをメモに取る。
居心地が悪そうな村長は、汗を拭きながらそれをチラチラと見ている。

「けど、近くの農家はやっぱり車に気付いてた」

「本当か!?」

「間違いないってよ。それは多分、すれ違いが起きたんだ。犯人と…あんたの間でな」

「ひぃっ!?」

炯斗が視線を流しただけで飛び上がる人間。
それは、ここの村長。

「あんたっていうのはちょっと違うか。でも、あんたら島民も一枚噛んでるよな」

一気に汗の量が増えた村長は、たどたどしく言った。

「や、私どもは頼まれただけでして、そんな…何も」

「とか言ってるけど?」