「考えても見ろよ。壁は一面紫で、窓の外は赤い景色。さらに夕方で暗くなり、備え付けの間接照明をつければ――」

「……気持ち悪い」

「下手な文化祭のお化け屋敷ね」

想像した朋恵と郁美は、顔をしかめて逸らした。
炯斗も目を落とす。ここまで来たら、言うしかない。

「そんな場所にいたら発狂したっておかしくないぜ。おまけにその日…じいちゃんと会って克己さんの精神は乱れてた。影響はもろに出たと思う」

透に視線を移すと、案の定彼は塞ぐように、組んだ自分の手を見つめていた。
殴ったことを、後悔してるに違いない。


「そしたらもう準備は完了だ。克己さんを訪ねるフリして、気絶させるなり、薬を嗅がせるなりすればいい。

動揺した人間から意識を飛ばすのなんて、通常の時より何倍も簡単だ」

ここからは、高橋が昨日言ったことと同じになる。

「意識のない克己さんを車でロープウェイまで運んで、倉庫にあったゴムで克己さんを縛る。余らせた両端をそれぞれ別方向のレールに結びつけ、ロープウェイを作動させれば、後は離れていくレールに従ってゴムは伸び、限界が来たところで克己さんは地面に向かって落ちる。今回は…谷だったけどな」


いつ思いだしても、慣れることのないあの光景。