「本来、3階にある克己さんの部屋の真上。もちろん間取りは同じ。恐らく犯人は、適当にトランクとかを置いて克己さんの部屋に似せてあったと思う。

けど、部屋の最大の仕掛けはそこじゃない。……色だ」

「「色?」」

周りが首を捻る中で、高橋はハッと表情を変えて炯斗を凝視する。
炯斗は、それに応えるように頷いた。

「最近、模様のあるビニールテープを貼って壁紙にするマンションがあるのを知ってるか?

犯人はそれを利用した。

部屋中にテープを貼って壁紙を作り、その上からペンキを塗って壁の色を一時的に変更したんだ」

その為に、部屋にテープの痕跡が見付かった。
そして、空いたペンキの缶も。

「ペンキの色は紫。窓は赤く塗られていた」

「それはともかく、何故犯人は、色を塗ったりしたんだい?」

「克己さんを弱らせる為にだよ。色っていうのは、心理に影響するんだ」

だから、精神科の病院は塗装が心を落ち着かせる緑だったりする。
白いイメージがある病院だが、白というのは今なくなりつつある。

白衣にしたって、淡い青やピンクなども出てきている。

犯人はそれを逆手に取った――ということだ。