空耳此方-ソラミミコナタ-


「そうそう、日奈山くんちょっと待って!」

「何だ?」

立ち止まって振り返ると、高橋は炯斗に2枚の写真を差し出した。

「何これ」

そういいながら写真に目を落とす。
そこには、捜査で見つけた赤いガラスと燃えたテープのカスが写っていた。
炯斗がめくるのに合わせて高橋が説明する。

「このガラスはここの宿のガラスのものと一致。そこに赤い塗料が塗ってあったようだ。
他に落ちていたガラスもこれと同じ。
次にこのテープ。よく市販されてる、カラフルだったりいろんな模様が書いてあるデコレーション用のテープがあるだろ? あれと同じものと判明。壁をよく調べてみたら、微量ながら、全域からこのテープと同じ接着剤が検出された」

「え? それってどゆこと?」

「部屋の壁全体にこのテープが貼ってあったってことさ。さらにそのテープからも塗料の成分が検出されたよ」

「何のために部屋に貼ったりしたんだ?」

さあ、と高橋は肩をすくめた。

「それ火事の写真?」

後ろからの声に、炯斗をやや飛び上がって振り返る。
炯斗の肩あたりから顔を出した郁美が、写真を覗き込んでいた。

「火事のときの?」

「そ。そういや、避難手伝ってたの二人だったよな」

「うん。声が聞こえてね。火災報知機もなってないから、廊下にある緊急ベルを私が押したんだよ」

その音で救われた人は多いだろう。
現に俺もそうだしな。

「なんで報知器がならなかったんだ?」

高橋を振り返ると、以前として肩はすくめたまま。
そこはそれじゃ駄目なんじゃないか? と思いながら高橋を一瞥し、お礼を言って写真をポケットにしまい言乃たちの元へ急いだ。
お待たせ、というなり恵がポケットを見つめたずねる。

「何だったの?」

「調べて出てきたもんの調べがついたってさ」


高橋の説明を繰り返すと、二人とも首を捻った。
恵たちの部屋に入ると、銘々座る。

「何なんだろう?」

「わかんねーなぁ…」

その時、言乃が口を開いた。


「一度、全体を整理してみませんか?」