空耳此方-ソラミミコナタ-


しばし、沈黙が落ちた。
反応が薄くて不安なのか、心なしか強張った顔で一同を見つめる。
その沈黙を破ったのは、朋恵。

「その大場さんが共犯でない限り、不可能ね」

【では、大場さんに克己さんを殺害する動機がありますか?】

「……それはっ」

わからないだろう。
恐らく警察は彼女はノーマークだった筈だ。

言い返すことの出来ない朋恵を真っ直ぐ見つめると、彼女はばつが悪そうに顔を背けた。

【ここで立証出来ない以上、透さんの疑いはかなり薄いものになります。そうですね?】

「……そうね。わかったわよ」

朋恵がフンと顔を背けると、三人はやった! とハイタッチ。

「そうなったとしても」

高橋が少し大きな声を出すと、三人はハイタッチの格好のまま固まった。

「明確な動機がある以上、完全に容疑者から外れる訳にはいかないよ」

「はーい」

「分かればよろしい」

なんだか丸めこまれた気がしなくもないが、主張は伝わったと信じておとなしく引き下がる。


だいたいの報告が終わったようなので、パラパラと席を立つ。


その時、高橋が炯斗の背中に声を投げ掛けた。