「何で紫…?」

「さあ…?」

顔を見合せ、二人は肩をすくめた。

中を見れば、他にもペンキの缶はいくつもある。

「でも、転がってるのはこれだけですね…」

「ああ。最近使ったんだと思う。多分、紫だけを一気にさ」

「でも、何の為に…」

「あー!! 二人ともいたぁ! 日奈山くん、見つかったなら教えてよ!」


振り向くと、高橋が口を尖らせやってきていた。

あ、と炯斗が声をあげる。

さっきあのまま置いてきぼりにしちまったんだ…

頬をかいて明後日を向く。
高橋は非難の目を炯斗から二人の背後に移した。
すると、顔を青くして目を見開いた。

「あ!! 倉庫が開いてる!」

とたんにまた言乃が顔を真っ赤にして小さくなる。

「あーあー! もうその件は終わったの。いいから、ハイハイ。これあげる」

「うわぁッ!!」

炯斗は高橋に倉庫の何かを放り投げた。

「へ、ヘビッ、蛇ぃ!!」

尻餅をついて逃げる高橋に、炯斗は声を上げて笑った。

「蛇じゃないって、ゴムだよ。長いの」

炯斗は高橋に投げたものを拾い上げる。
1mほどの長さのものがビローンと垂れる。