その頃、当の朋恵はというと、郁美と二人で島の小さな港に来ていた。
島民が漁でもするのか、少しだけ船がとまっている。
だが、そこに人の影はない。
警察が島の封鎖をしているからだ。長引けば島民の生活に影響する。
早く解決までこぎつけないと――
そう気は焦るが、今の朋恵は捜査の為にここに来た訳ではない。
ただ――見せられないのだ。
今から朋恵がすることは、警察関係者から反感を負いかねない。
地元の署ならもう公認なのだが、ここでは知らない者が多い。
だからこうして人気のないところまで繰り出して――
「朋恵―、早く済ましちゃいなよ」
「うるさいわね、すぐに掛けるわよ」
朋恵の手には携帯電話。
そのディスプレイに映るものは一人の携帯番号。
後ひとつボタンを押せばすぐに電話がかかる。
指は既にボタンの上に置かれているのだが――
「最初にそう言ってもう30分は経つよ?」
言葉に詰まる朋恵。
はっきり言って、こんなヤツに自分から電話を掛けるのは絶対に嫌なんだけど……
朋恵は、不覚にも近づく手に気が付かなかった。その手は朋恵の指を掻い潜り発信ボタンを。
「はい、ポチッとね!」
「あああ!! 郁美ぃッ!!」